精神障害を持つ方の雇用形態が変化している
1)精神障害者の社会進出
近年、精神障害への認知が広まり、障害者雇用促進法など法体制も見直されました。その影響で精神障害を持つ方の社会進出も進んでいます。年々就職件数は増加しており、現在は20万人以上の方が就職しているのです。
2)精神障害者の離職~1年で3割の精神障害者が離職してしまう
しかしながら、就職件数が挙がっているのと同時に、離職してしまう方の件数も増えてきているのです。採用後の課題である『精神障害者の職場定着』が難しく、様々な事情から働けない状態になってしまうケースがあります。
精神障害を持つ方で入社後1年間続くのが障害者雇用の方で7割、一般雇用の方ですと半分まで減っています。これは3割以上の方が1年で離職している計算です。
概ね精神障害を持つ方は入社後3~5年で離職する傾向があります。他の障害を持つ方と比較しても、職場定着がしにくいのが現状です。
今回はそうした精神障害を持つ方が、
・どうして離職してしまうのか
・離職をせず、働き続けるためにはどんな対策が必要なのか
この2点を中心に紹介していきます。
【精神障害】離職につながりやすい原因
1) 障害特性によって必要な配慮や対応が多岐にわたり、サポート側に負担がかかる
対人関係を理由に離職することは障害の有無に限らず、多くあることです。精神障害を持つ方にとっても同様で、かつそれが直接の体調悪化につながりやすいことが特徴です。
ひとえに精神障害といっても、さまざまな障害の種類があります(障害の種類に関してはこちらの記事を参考としてください)。さらには人それぞれの性格によって求められる配慮や対応も変化してくるでしょう。同じ障害名でも、全く正反対の対応を求められる場合もあるのです(はっきりと言ってもらいたい場合と、それとなく行ってほしい場合に分かれる、など)。
この様々な特徴を理解したうえでサポートをするということは、職場や管理者にとって簡単なことではありません。
2) 障害を持つ方本人の、社会生活に適応する体力が不足している
精神障害を持つ方が離職する理由に多く挙がるのが、『体調面・健康面の問題』です。運動をする体力とは異なり、働く為の体力は社会生活を行う上で身につくことが多いでしょう。しかし就職前にこれを身につけることは難しく、かつ環境や気候の変化による疲労が大きいなどの特徴もあります。
また、自身の健康状態についての理解が不足している場合、限度を超えて無理をしてしまうケースも多いです。これらの事情により体調維持に苦しみ、離職してしまうことがあります。
個々によって不調のサインや体調を崩すタイミングなども様々です。そのため周囲も変化に気づきにくいことがあるかもしれません。
参考:図表1-1-38 精神障害者の離職の理由(個人的理由)(複数回答)|平成30年版厚生労働白書-障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に-|厚生労働省
関連記事:【要注意】精神障害が仕事で体調不良のリスクにつながる考え方3つ
3)職場に余力がなく、障害者雇用へ配慮することができない
大企業であれば障害者雇用に向けた組織や体制づくりも整いやすく、比較的配慮しやすいことがあるでしょう。しかし、社員の少ない中小企業などは既に余力がなく、限界ギリギリの状態で仕事を進めているところもあります。
このような企業でも、法定雇用率に沿って精神障害者雇用を雇わなければなりません。雇用しないといけないことも、その後のサポートが必要なことも知りながらも、普段の業務をこなすだけで精いっぱいという企業もあるのではないでしょうか。そうして実際に配慮まで行き届かないという問題があるのです。
または人出など十分な体制があったとしても、精神障害に対してどう配慮すればよいかなどノウハウを知る機会がないために苦労している企業もあるでしょう。
この3つの原因が、精神障害を持つ方の離職につながる主なケースです。では、この原因を改善し、職場に定着できるようにするにはどのような対策が必要なのでしょうか。
【精神障害】離職率低下、定着率向上のためのポイント
1)多様な障害特性を把握する
対人関係を理由とした離職を防ぐには、遠回りかも知れませんが多様な障害特性を知るところから始めなくてはなりません。先ほど人それぞれの性格によっても異なると説明しましたが、それもまずは障害特性がどのようなものか「基本」を理解したうえでのことです。ですから『障害者』とひとくくりにするのではなく、さらに「障害特性ごと」、その先に「個々の性格ごと」と分けて考えていく必要があるのです。
精神障害を持つ方は「理解してくれている」「受け入れてくれている」と思うだけでも、精神的負担が緩和され体調を崩すリスクが減るのです。
2)事前に障害者の不調時の状況を把握する
精神障害を持つ方の健康面を理由にした離職を防ぐためには、早期に休養を取れる環境が重要です。「何かあってから」「申告があってから」では間に合わないケースが多いので注意しましょう。この「間に合わなくなるケース」には2種類あり、
・当事者(精神障害を持つ方)本人が疲労やストレスを自覚していないケース
・当事者本人は疲労に気づいているが、遠慮して無理をしてしまうケース
この2種類があります。
したがって予め本人と相談の機会を設け、「普段の状態」と「不調時の状況」を確認しておくことが大切です。少なくとも「普段の状態」が理解できているだけでも、様子の変化に気づき離職のリスクを防ぐことにつながります。
3)障害者雇用の方のストレスとなる原因を把握する。
精神障害を持つ方は、当事者でない方からは想像しづらい原因によって不調やストレスを感じることがあります。例えば特定の音が苦手であったり、眩しい光に苦しんだり、匂いに対して敏感で不調になりやすいなどのケースなどです。または気圧の変化から不調を招くなど環境によって大きく体調が左右されることもあるのです。
この不調の原因も個々によってさまざまです。そのためあらかじめ当事者本人から「どんなことがストレスになるか」を確認しておくことが必要になるでしょう。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
今後は精神障害の方が職場に定着し、戦力としていかに活躍していけるかが企業としても大切なポイントとなっていくでしょう。それぞれの精神障害のウィークポイントを知り強みを生かすことで、精神障害を持つ方の離職を防ぎつつ、かつ事業の成長につながる戦力として定着していく可能性もあるのです。
障害者雇用に対してどう接していけばよいのかなど、対応や配慮方法に不安を感じていたら、このサイト『Salad』までご相談ください。お問い合わせやご相談はこちらのメッセージフォームからメッセージを送ることで行えます。ぜひ、お気軽にご相談ください。